日本語を話す人たちにとって、代名詞を使いこなすのはとってタイヘン
その理由は。。
1.日本語では主語となる代名詞をはっきり言わないので、代名詞を使い慣れてない。
2.代名詞を意味によって変化させる規則を理解するのがむずかしい。
3.代名詞の4つの形(主格、所有格、目的格 と所有代名詞)を覚えるのがむずかしい。
4.代名詞の表す意味を とらえるのがむずかしい。(←これが最難関!)
英語の授業では主に2,3を中心にレッスンしますよね。代名詞の表をみながら チャンツし(口頭でリズミカルに唱え)ながら代名詞の形の変化を「音」で覚えることが多いのでは?
音で覚えられたら「文字」で正確に書けるように練習して、テストなどで確認して終了、というパターンがほとんどでは?
でも私は4(代名詞って何を表しているの?)を理解することが一番難しいのではないかと考えています。
エピソード1
his motherを ひとつの代名詞で表すとき hisのイメージにつられて男性(he)
と言ってしまう
エピソード2
our teacher を一つの代名詞で表すとき ourのイメージにつられ複数のtheyを選ぶ
エピソード3
you and Tom を一つの代名詞で表すとき theyを選ぶ(*本来はあなたたち:youを選ぶ)
エピソード4
his mother and I を一つの代名詞で表すとき theyを選ぶ(*本来はわたしたち:weを選ぶ)
こういう間違いは 例えば定期テストなどでもミスしやすい点なのですが、「なぜ間違えちゃったのか」をきちんと説明できない(意味を正確に把握していない)と、ずーっとこの先もまちがえ続けてしまいますね。
これを防ぐため、具体的な代名詞のイメージを持てるように、私の教室では「代名詞に仕分けるゲーム!」をやります。
考えつくあらゆる「名詞の絵カード」(単数、複数、不可算名詞、人間、動物、もの、事件、現象など)を2~30枚用意します。
子どもが順番にめくっていき、できるだけ早く代名詞に変換する、というちょっとスピーディーなゲームです。
単数や不可算名詞が出たら1点・複数には2点です。個人やグループ対抗で高得点の人やチームの勝ちです。
これだけなのですが、どんな時にお子さんがつまづいてしまうのかがよくわかります。意味もわかっているのかを確かめるために 日本語で言ってもらうのも重要です。
「私を含む、たくさんの人たちをまとめていうときは、なんていうの?」と尋ねたら
「彼ら」(they)と いう答えが返ってきたことがあって非常に慌てた経験があるのです。
それ以来「私を含むたくさんの人たちは?=私たち」ですね、など、日本語の定義を必ず口頭で言ったり ワークシートに明記することにしました。
そうそう!
複数っていくつ以上のものを指すのかな?とたずねたとき、
「たくさん」と認識しがちなお子さんが多いのも 注意してくださいね。
指導者も「そうですね」でおしまいにしてしまうことが多いですね。
これにはとても注意が必要です。
「3,4個以上かなあ。」という答えが返ってきたこともあったっけ。
「2個以上なら ぜ~んぶ複数なんだよ」といったら え~!!? と本気で驚かれたこともありました。(こちらが驚く番!)
「英語には 1つだけの世界と 2個以上の世界と 全然ちがうタイプの世界があるんだよ~! 英語話者には 色で表すとしたら全く異なる色をしている世界が2種類、頭のなかにつくられているんだよ。」とイメージを持ってもらうようにしています。
最後に、最近かなり驚いたエピソードをご紹介します。
"Ken has two dogs. They are Pochi and Coco. Ken likes them."
という英文が問題として出されていました。
「"them"は何をさしているのかを 日本語で書きなさい」という問題です。
あるお子さんは「たましい(魂)?みたいな感じ?」というイメージを持ったそうです。
「たましい?」
ブログをお読みの方も一緒に考えてみてください。なぜ「たましい 魂」?
私が考えたこたえは、これ。
代名詞は 「二匹の犬」を言葉「them」で単に言い換えたもの であることを このお子さんが理解していなかった可能性があります。
代名詞themという言葉で言い換えた以上は なにか「2匹の犬」そのものではない その背景にあるものを表すに違いない、と勘違いをしていたのでは?
一生懸命かんがえた末に、「生き物だからその背景にある魂をさすのかな?」と考え付いたのかもしれません。
このエピソードは 言語哲学、という分野にも通じる 深いものがありますよね。
このブログをお読みのみなさまにも、似たようなご経験をされた方がいらしたら、ぜひ教えてください。お子さんに新しい言葉のイメージを持ってもらうことは 本当に奥が深い、と改めて実感した経験でした。
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