英語のASD傾向のあるお子さんに英語の文法を説明していると、思いがけない質問を受けることがあります。 かえって「こういうところで疑問にぶつかるんだ!」と 私の方の学びが多いのです。お子さんに教えてもらっている、ということが心からわかる瞬間で、私は好きです。
この間もこんなことがありました。
「3人称現在形の動詞につくs」、いわゆる「3単現のs」には、なぜ sだけをつけるときと、esをつけるときと、2とおりあるのか。
皆様はどのように説明されるでしょうか?
「動詞の最後の文字が s z sh ch x で終わるとき、esをつける」
このように理解をしていることが多いですよね。
発音してみるとわかりますが、s z sh ch x のあとにsを発音しようとすると
前歯のすぐ後ろに舌があるので、改めてsを発音しようとしても とにかく発音しにくい。
それに、どこからどこまでが動詞本体の発音で、どこが 付け足したsの発音なのか
発音している本人も さっぱりわからない!という事態に。
しかたがないので、クッションのようにeをはさんで
miss misses
quiz quizzes ( zが二つに増えるのは、母音iの発音を変えないようにするため)
mix mixes
wash washes
catch catches
こうすれば es(イズ)の部分は付け足した「3単現のes」であることが 口頭でのコミュニケーションであってもハッキリして、とても具合がいい!というわけです。
と、ここで お子さんから質問がありました。
「s の次にsの音が続くときには 他のどんな時でも 言いにくいからやはりesに変化するのですか?」
という質問です。
質問された瞬間は、??? 一瞬 質問の意味がわかりませんでした。
よくよく聞いてみますと、次のような内容であることがわかりました。
例:This singer is famous. (この歌手は有名です)
上の文のように、単語の語尾と次の単語の語頭が 双方ともにsの発音のようなときにも、言いにくいからesへと形が変化するのではないか? という仮説を このお子さんは立てていたのです。
例文でいうと、 This esinger is famous.
と変化するのか?という疑問でした。
なるほど~!
自分のこれまでの説明では発音部分にだけ注目しており、文法的な背景が足りなかったのですね。
This esinger is famous...× このような文に変化することはありません。
「”一つの単語” が文法的なルールにのっとって機能的に語尾変化するときだけ
s→esの変化がおきる」
この説明が 足りていませんでした!
別の2単語が sとsという同じ音で続いてならんでいても、この変化は起きない。まったく別の単語だから。もし 別の文字であるeを次の単語の語頭につけてしまうと、違う単語に意味が変わってわってしまう可能性がある。 動詞や名詞や形容詞や副詞などの単語におきる機能的な変化(s/es, d/ed er est ) は 語尾だけが影響を受ける。
だから、この文のように sとsが二つならんでいても 2つ目のsは語頭なので自然につなげよみをしてOK.
さらにいうなら、
文字で書いてあるものは かならず 単語と単語の間が空いているから、書き手も読み手も 別々の単語であることがはっきりしている。どこからどこまでが単語なのか? という区別ははっきりとわかるから 「sは語尾の接尾辞なのかどうか、区別がつくだろうか?」という心配いらない。
と、
このように説明しました。
「なるほど、単語と単語の間をかならず空けて書くから、どこまでが1つの単語かと、迷うことはないのですね!」というお子さんのコメントをききながら、考えました。
そもそも英語には「単語と単語の間は 必ず1文字分ずつ空けて書く”分かち書き”ルールがある」ということを 目で見ているだけでは気づかないお子さんがいるということです。
口頭でも何回か このことには触れていました。
分かち書きルールが反映されている、実際の英文も何度も目にしていました。
けれども、「分かち書き」が 語尾だけに適用される接尾辞のルールを見分けるための、鍵になっているということに 私はこのとき ハッキリと意識することができました。
とっても勉強になったレッスンでした。(私が💦)
ひょっとして、英語の文法でつまずくお子さんの中には、このように、背景になっている英語の「書くときのルール」や「文法構造全体」を知ることができれば、納得して前へ進めるお子さんも数多くいるのではないか。
そんなことも考えた一日でした。
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